大会に出るための作品。

その作品のテーマを決めて取り掛かることになります。

一条高校で最初に大会作品をつくった時、テーマはスポーツでした。そして作品を作り始める中でいろいろなスポーツをテーマにするのではなくバスケットボールだけに絞っていきました。

テーマはバスケ。

曲を編集し、振りをつくり、構成を考え、作品が出来上がり、大会を控えた約一週間前に当時のチームリーダーから電話がかかってきました。

先生、テーマは同じバスケで、衣装もそっくりで、構成もよく似ていて、始まり方とか終わり方とかもよく似ているチームが去年の大会に出ていました。そして優勝しています。どうしたらよいですか、と。

そうか、悩ましいな。

一条高校、高校ダンス部の大会というものに初めて参加するので、その大会の主催者に前年の大会のDVDを借りていろいろと作品の研究をしていたのですが、俺もチームリーダーもその作品は見ていなかったのです。

なぜかというと、部門が違ったからです。同じ部門の作品は見ていたけれど、別部門にまではリサーチがいっていませんでした。

違うのは、その高校の作品は実際にバスケットボールを使って演技していること。そしてもちろん使っている曲は違います。ただコンセプトはかなり近い。

チームリーダーからの指摘があったので、DVDで確認しましたが確かによく似ている。作品の質も高く魅力的でカッコイイダンスでした。

真似をしたと思われてしまう。チームリーダーは随分不安に感じていましたが、もうどうすることも出来ません。作品を作り変えることなど、いまさら出来ない。大会まであと一週間ほどしかない。何ヶ月もかけて作り上げてきた作品を堂々と踊るしかない。

そして俺たちは決してその高校の真似をしたわけではない。

しかしながら初めて大会というものに出場するので、不安はなかったわけではありません。前年の他校の作品のテーマやコンセプトを真似て作ったのではないかと、そんな風に受け取られてしまうのではないかと。

それでも大会の時に不安を抱えたまま踊るわけにはいかないので、全く気にすることなく踊りきりました。なぜなら真似をしたわけではないのだから。

そして誰からも指摘されることなく、一条高校は見事にその大会で最高の成績をおさめることが出来ました。今でも輝きを失わないかっこいい作品です。

なにを選んでどう踊るか。結局のところ、そういうことなんだろうと思います。なにを選んで、そしてどう踊るか。自分たちで徹底的に考え抜いたオリジナルな作品には熱量が込められます。

ちなみにそのよく似た作品を前年に踊っていた高校は北九州市立高校です。